りんごを描く

こちらは「りんごを描く」のページです。

ちょっといいりんごの画像を入手したので、教室の課題にするにあたり おおまかな手順をこのブログ上に載せてみようと思い立ちました。細かい一手一手までアップしているわけではありませんが、全体の手順の流れみたいなものはお伝え出来るのではないかと考えています。

手順は 描き始める前から綿密に決めてはいません。画面上で水がどう動くのか分からないからです。それでも あらかじめ大雑把な流れは考えておいた方がいいでしょう。

使った絵具はすべて ウインザー&ニュートンの透明水彩絵の具、紙は「ファブリアーノ・アルティスティコ エクストラホワイト」中目、マスキング液はホルベイン・マスキングインクを水で1.5倍に薄めたものを使用しました。

元画像がこちら…。

この粗野で無造作に置かれた感じが気に入って 描こうと思い立ったものです。ただ 右側のりんごが、ヘタが隠れて下向きの構図になっているのが なんとなくちぐはぐな印象だったので、上向きに、ヘタが上に見える構図になるように改変しました(*^_^*)。

まずは 鉛筆で下描き。

主要な線はしっかり描いていますが、細部まで描き込んではいません。色をつけながら線も描き足していくという感じです。

視線が遠くへ抜ける、という構図ではないため、画面上部の葉っぱが寄せ集まった辺りは適度にぼかします。

まずは一発目。

画面全体に統一感を持たせるため、りんごの一体感を出すために、「ローズドーレ」を薄くウオッシュ。画面中央から塗り拡げていき、りんご全体を覆った辺りで周囲にフェードアウトするように水でぼかす。

手前二つのりんごの上部、木の枝のハイライトをマスキングしたのち、ウエット・イン・ウエットで色を置く。刷毛で画面全体に水を引き、「カドミウムレッド」単色と「カドミウムイエロー+ゴールドオーカー」の混色を大まかに滲ませる。                 滲んでいく際に画面に表出するエッジなどは透明水彩ならではのもの。意図と違ってもそのままにする。このいい意味で「放っておく」ことも技法のひとつです。

滲みが止まるまで観察し、状況によってはさらに色を投入したり、滲みを逆流させるように水のみを落としたりするのも一興です。              

  

赤い実一つひとつのツヤ、それに相当するような明るい箇所をマスキングしたのち、画面の中で「ピンク」を強く感じる箇所に、ウエット・イン・ウエットで色を置く。再び刷毛で水を引き、「オペラローズ」を濃い目に小さく滲ませる。

りんご側面の「赤」を強く感じる箇所に ウエット・イン・ウエットで色を置く。 刷毛で水を引き、「カドミウムレッド」を濃い目に滲ませる。滲みが止まったらドライヤーなどで完全に乾かし、同じカドミウムレッドで今度は赤い実を、滲ませず下描きに沿って描いてゆく。 

りんごも赤系の色だけでは深みが出せない。                      各りんごの、影になっている手前側面に「ネイプルスイエロー+オリーブグリーン」の混色を薄く置く。ヘタのくぼみにも。

主題のりんごをしっかり描いてから周囲を色で埋めていくという描き方もよいが、やはり全体のバランスを見ながらりんごもその周りも並行して描き進めるのがよいように思う。

画面下と左の黄色い葉に色をつける。手描きで残すのが難しい小さな明るみをマスキングしたのち、「ゴールドオーカー」単色を葉全体に置く。

さらに 葉の内側の暗がりを「ゴールドオーカー+ペリレーンバイオレット」の混色で描く。不要な境目が残らないよう、暗がりから明るくなる部分は水でぼかす。同じ色の濃淡で 葉の先端のしなびた感じや葉脈も描く。

画面左下の小さな葉を「ブラウンマダー+ゴールドオーカー」の混色で描いたのち、「ブラウンマダー+パーマネントサップグリーン」の混色でテーブルの天板を描く。のちに板の継ぎ目や影を入れるので、まずは軽くウオッシュ。

りんご側面の強い赤を「ブラウンマダー+カドミウムレッド」の混色で描く。 いったん乾かしたのち、りんごの下半分の茶色がかった濃い赤を「カドミウムレッド+パーマネントサップグリーン」の混色で描き入れる。

りんご最下部の濃い影を「ペリレーンマルーン+パーマネントサップグリーン」の混色で描きいれたのち、「カドミウムレッド+ペリレーンバイオレット」の混色で 赤い実に濃淡をつけてゆく。                                      赤い実の黒ずんだ部分や濃い影を「ペリレーンマルーン+ウインザーグリーン(イエローシェード)」で描き込んだのち、「ペリレーンマルーン+パーマネントサップグリーン」の混色でテーブル天板の色を深くしている。

主題のりんごはもちろん、黄葉した葉も重要なピースだが、この絵の成否はりんごの土台となっているテーブルの天板がしっかり描けるかどうかにかかっている、と ここまで描いてきてあらためて思うに至る。                              「ペリレーンマルーン+ウインザーグリーン」の混色で 天板の木目、継ぎ目を描き入れる。

「ペリレーンバイオレット+ウインザーグリーン(イエローシェード)」の混色で りんご下の濃い影を描き入れる。                               同じ色で手前の葉内側の虫食い穴も描く。

ここから背景に移る。画面上部数か所に「小さなウエット・イン・ウエットの繰り返し」で「ブラウンマダー+ゴールドオーカー」の混色を滲ませる。「背景」なので 細密でなくてもよく、元画像と違ってもよい。滲みが止まるまで観察し、その時々の判断で水や色をさらに投入する。

二つのりんごの間の影や 右側のりんごの上、画面左の赤い実の後ろなど極小さな影を「ペリレーンマルーン+ウインザーグリーン(イエローシェード)」で描く。ここでも「小さなウエット・イン・ウエット」で滲ませている。

りんごのヘタのくぼみと芯を描く。                          「ブラウンマダー+パーマネントサップグリーン」の混色(サップグリーン多め)でくぼみの影を描き入れ、同じ混色のブラウンマダー多めで芯を描く。 その後「ペリレーンバイオレット+パーマネントサップグリーン」の混色で木の枝を描く。一旦薄めに描き入れたのち、濃く見える箇所だけをさらに描いている。

マスキングを剥がし、剥がした跡が極端に目立つ箇所などに色を加えて微調整する。 最後に、サインを入れて、完成(*^_^*)。                                                   「豊穣の光」 22.2×15.8センチ                           このままでは手順としては不完全かと思われますが、菊地の混色のパターンなどはお伝え出来たのではないかと思います。今後、随時加筆していくつもりです。

みなさんにとって何がしかの参考になれば幸いです(#^.^#)。